日々是修行

様々な修行にチャレンジして、その気づきを書いています。

滝修行 その1

滝修行に誘われて、チャレンジすることになったあの日。実は少しあなどった気持ちで「何でわざわざ滝に入らないといけないの」「別にそんなことしなくてもいいでしょ」などと思っていました。

 

モノ好きな人もいるもんだ、バラエティー番組の企画などでやっているイメージしかありませんでした。でもやってみようと思ったのは、そのときに色々な悩みを抱えていたからかもしれません。もしかしたら何か変わるのかもしれないと期待があったからかもしれません。

 

当時の私は職場で昇進して、たくさんの部下を抱える役職についていました。今までにないプレッシャーと仕事量にあっぷあっぷしていて、見た目には分かりづらかったかもしれませんが、かなり気が滅入っていました。

 

休みの日も仕事のことばかり考えて、落ち着かずに、心身をすり減らしていました。

 

自分の成長のためにと、本を読み、セミナーに参加して、、、けれども何か自分に足りないものを感じて、それを埋めることができませんでした。付き合っていた彼女とも別れたばかりでした。

 

そんな自分を見かねてか、後に師匠となる人から「滝修行をやってみませんか」と誘われたのでした。

 

滝を眺めることができる位置に来ました。想像以上に水の量が少なくて「これなら余裕でしょう」と余計にあなどった気持ちが出てきました。テレビで見るような、押しつぶされるような水量ではありません。直径10cm程度の滝が頭上10mから落ちてきています。

 

「これなら軽い水浴びみたいに終わっちゃうかな」と思いました。ところがいざ滝着に着替えて、滝の近くに行ってみると、全く別物に見えます。決して強くないはずの水流が、地面を強く叩きつけているのを見て、これが体に当たるのは痛いかもしれない、、、と少し怖気づきました。

 

初夏の少し汗ばむくらいの暑い日にもかかわらず、水しぶきが体に当たると、冷たくて体が萎縮してしまいます。これを体に浴びたら、どうなるんだろうと思うと、体が震えます。

 

抑えようと思っても、震えや寒イボが止まりません。滝場をホウキで掃いて、掃除しているうちに、体がどんどん冷えていきました。岩場の冷たさも、ゴツゴツとした硬さも、体に染みてくるようでした。

 

日頃デスクワークが多くなり、学生のときには陸上で鍛えた体も、今では青白く貧弱になっていました。体の鈍った感覚器官がみるみるうちに敏感になっていくようでした。

 

「舐めていた、、、」準備なく来てしまったことを少し後悔しました。けれどももう逃げることはできない。と覚悟を決めて、滝に臨むのでした。

 

師匠が滝場に結界をはります。その迫力が凄いのなんのって、女性の師匠が本当に不動明王様のように感じました。迫力と同時に、ぶれない、安定した動きに見とれていました。

 

 師匠が入ったあとは、私の番です。さらに滝の近くまで来ると、体がガクガクと震えて仕方がありませんでした。怖くてたまりません。声も震えてしまい、決められた言葉をまともに言うことができませんでした。

 

そして、滝の中に入った瞬間、体が崩れ落ちそうになりました。滝の水流に押しつぶされそうです。懸命に滝の中で立って、ご真言を唱えるのですが、水の冷たさに体が萎縮して、声が出ません。必死になって、ご真言を唱えて、体の震えを力でなんとかやり込めて、でも、悲惨なほど惨めな姿だったのではないかと思います。

 

師匠が近くに立って、私の体をガシッとつかんでくれました。少し気持ちを取りもどすことができました。師匠が体をさすりながら、体に溜まっていた悪いものをはがし落としてくれます。

 

はい、終わり!とでも言うように、私の手をグッと引っ張り、滝の外に出してくれました。滝に入っていたのは、おそらく10秒くらいだったでしょうか。しかし、もっと長い時間入っていたようにも感じられます。

 

何とか滝を終えたことにホッとして、震えた体をもう抑えることなく、ブルブルとさせておきました。着替えたあと、やりきった充実感がわいてきました。今まで体験したことがないような刺激が体に入って、不思議な感じがしました。スッキリしていると表現するのが一番的確だと思いますが、実際に味わっているのは、もっと爽快な感じなのです。

 

体から悪いものが流れ出ていったような体の軽さや視界の明るさがありました。こんなに自分の体は軽かったんだと思いました。私にはこれを科学的に適切な言葉で表現することはできません。滝修行は「究極のデトックス」だと思いました。

 

学生のとき、プールに入ったあとの、抗い難いダルさが襲ってきました。眠いような、まどろむような、心地よい感じがありました。